コンテナは大きく分けて、建築用のコンテナと貨物用のコンテナに分けられます。コンテナハウスは建築基準法の対象となるため、住居用のコンテナハウスを建てる際には使用するコンテナにもこだわる必要があり、貨物用コンテナとは価格も異なるため注意が必要です。
ここでは、建築用コンテナと貨物用コンテナの違いや、それぞれのサイズについて紹介します。
コンテナハウスでは、ほとんどのケースで建築用コンテナの使用が求められます。貨物用コンテナとの大きな違いは以下の3点。
特に居住用の場合は安全性に大きく関わることなので、依頼するコンテナハウスメーカーが上記に対応しているかどうかを事前によく確認しておきましょう。
決定的に重要なポイントは、建築用コンテナは「建築基準法に適合する」が、貨物用コンテナは「適合しない」という点にあります。建築基準法は、国内で建築物を建てる際のルールを定めた法律です。この法律に適合しないものは、建築物としては認められず、全て違法建築となってしまいます。
貨物用コンテナは、文字通り貨物輸送に用いられるコンテナですから、建築基準法には適合しません。貨物用コンテナは国際的なISO規格でつくられた輸送コンテナを指しており、建築物ではないため、上記の基準(JIS規格)に則った「JIS規格の建築用コンテナ」とは似て非なるものです。
一般的なコンテナハウスには建築用コンテナが用いられており、その源流は貨物用コンテナを模倣したものですが、貨物用コンテナのままでは、家や事務所、店舗、倉庫など建築物としてのコンテナハウスを建てることができないのです。
このように建築用と貨物用の決定的な違いは、建築物としてのコンテナハウスを建てられるかどうか?という点にあります。
貨物用コンテナを活用してコンテナハウスを建てることは不可能ではありません。コンテナの材質と構造をリセットして改修を行い、JIS鋼材を用いて一から作り直し、建築基準法をクリアすることができれば、建築物としてのコンテナハウスを建てることができます。
ただし、改造にかかる費用が膨大になる可能性があるほか、材質や構造、強度の問題など技術的な理由から建築確認申請を通すのが難しいなど、リスクは小さくありません。そもそも建築基準法が求めるJIS鋼材を使用していない貨物用コンテナは、建築物に用いる時点で違法になる可能性もあるなど、非常にハードルが高いです。
余分なコストやリスクを抑え、スムーズに理想のコンテナハウスを設置したいと思うなら、建築用コンテナを使用することをおすすめします。
建築用と貨物用の違いは、設計自由度にも表れています。貨物用コンテナの場合は「壁式構造」といって、全身を覆っている壁がそのまま構造体となっているのが特徴です。そのため貨物用では、内装デザインや間取りの自由度が低いのがデメリットになります。
一方、建築用コンテナの場合は「柱」と「梁」で構造体を成す「ラーメン構造」が用いられており、壁の取り付けや取り外しが容易で、壁のレイアウトをさほど考慮する必要もなく、自由度の高いデザイン、設計、間取りをつくることができます。
建築用コンテナの強度を担保しているのは柱と梁です。そのため余分な壁を取り払って薄くしたり、広いスペースを確保したり、吹き抜けを設けたり、複雑で個性的な間取りやデザインをつくったり‥ニーズに沿った住まいづくりが可能です。
コンテナハウスに窓や戸口など開口部を設けた場合の、強度の変化にも注目してください。
まず貨物用コンテナは、元々は非常に高い強度と耐久性を有していますが、開口すると構造のバランスが崩れてしまい、本来の強度を保てなくなります。貨物用は壁で強度を担保しており、その壁を開口することで歪みが生じ脆弱になってしまうのです。
一方、建築基準法に適合するJIS鋼材でつくられた建築用コンテナは、柱と梁で強度を担保するラーメン構造になっているため、窓など開口を設けても強度がしっかりと保たれます。開放性抜群の大開口窓を設置しても、極端に強度が落ちることはないため安心です。
建築用コンテナは、基本的には貨物用のコンテナと同じ以下の2サイズがあります。
その他、31フィートタイプや12フィートタイプなどイレギュラーなサイズも存在します。コンテナメーカーのなかにはオリジナルサイズで新造コンテナを用意してくれるところもあり、土地の形状的に難しい場合などには便利です。
基本サイズ別の寸法の目安は以下のとおりです。
20フィート | 40フィート | |
長さ | 約6m | 約12m |
幅 | 約2.4m | 約2.4m |
高さ | 約2.6m | 約2.6m |
上記寸法は「外寸」(外側の寸法)です。コンテナのサイズはISO規格により定められていますが、外寸は明確なのに対して、「内寸」(内側の寸法)はコンテナメーカーによって違いがあります。そのため、内寸に関してはメーカーごとに(商品ごとに)寸法の確認が必要です。なお、内寸は外寸より僅かにサイズが小さくなります。
コンテナは種類によってサイズが変わりますが、サイズによって値段も変化します。新品コンテナ・中古コンテナそれぞれのサイズ別価格相場は以下の通りです。
〇新品の場合
上記はコンテナ単体のサイズ別価格相場の目安です。輸送費をはじめ、基礎工事費、設置費、内装費、設備工事費等を含めた建築費用の総額ではありませんので、注意してください。
またメーカーによって価格は変化しますので、実際にコンテナハウスを購入する際には、事前のリサーチと比較が必要になります。
手作りのお弁当やミソスープ、おにぎりなどを提供するコンテナショップ。20フィートのコンテナを1台使用し、将来的には移動ができるよう置き方も工夫されています。テイクアウト専門なら、20フィートでも十分お店を開くことができます。
40フィートのコンテナを1台使用した横に長いヘアサロン。無骨なイメージになりがちなコンテナですが、白いカラーや温かみのある照明、木材との組み合わせにより洋風なおしゃれさを演出することも可能です。建築用コンテナなら窓を設けられるため、光もしっかりと入ってきます。
40フィートのコンテナを3つ連結した、オフィス兼住宅です。複数の色を使用することでより立体的かつ個性的な印象に。周りの景色に合わせてグリーンとブラウンを使用しているのも素敵です。斜めに配置した2階部分は、構造計算をクリアしたうえで採用されています。
40フィートのコンテナを2つ重ねることで、建物に迫力を持たせることもできます。また、ロゴを入れることで看板のように使用することもできますね。豊洲のビルの景色に溶け込んだ真っ白いコンテナが都会的な雰囲気を醸し出しています。
20フィートのコンテナをL字に2つ組み合わせた、たこ焼き&カフェのお店。空いた空間にウッドデッキを設置しているため、テラス席として使うことも可能です。画像は店舗の裏側ですが、表側には窓やカウンターを設置して接客ができるようになっています。
コンテナのタイプは「建築用」と「貨物用」、規格サイズは20フィート、40フィートなど数種類ですが、外観スタイルは多種多様です。
サイズに規格があっても、複数のコンテナを自由に組み合わせることで設計や間取りの自由度は高まり、外装や内装をカスタムすることで、ニーズや好みにマッチするスタイルのコンテナハウスが実現できます。
用途も幅広く、事例写真にもある通り、コンテナショップやヘアサロン、オフィス、イベント施設、カフェ、ガレージ、演奏室‥etc。住宅も含めて様々な形態のコンテナハウスが建てられるのです。
ルーツは武骨な輸送コンテナですが、アイデアと工夫、カスタム次第でいくらでも新しい建築物を生み出せるのがコンテナハウスの魅力といえるでしょう。
事例写真にはありませんが、コンテナハウスの中には、住宅と車を兼ねる「移動式コンテナハウス」というのもあります。ハウス=家なのに「車ってどういうこと?」と驚かれるかもしれませんが、実際にあるんです。
移動式コンテナハウスは、一般的なコンテナハウスに適用される建築基準法ではなく、車やトラックなど車両を対象とする「道路運送車両法」が適用されています。トレーラー用のシャーシ(車台)の上にコンテナを積載し、タイヤも装着して、車と住宅を一体化させた特殊なスタイルのコンテナハウスです。
移動式コンテナハウスは建築物ではなく〝車両扱い″となるため、車検や自動車税の納付が必要になる場合もありますが、その反面、建築物ではないため建築確認申請が不要となり、固定資産税を払う必要もありません。住んで・移動もできる2WAYの固定資産でありながら、税鬼面でお得になるのです。
一般的なコンテナハウスとは異なる変わり種ですが、こうした種類があることも覚えておくといいでしょう。
コンテナの種類やサイズについて、それぞれの違いを紹介しました。コンテナハウスは建築基準法の対象であることから、建築用コンテナを使用することが大切です。ぜひ種類を理解して、あなただけのコンテナハウスを建ててください。